
「先週抜いたばかりなのに、もうパンパンに腫れてきた」 「先生からは『水を抜くとクセになるから』と言われたけど、じゃあどうすればいいの?」
整形外科に通い続け、毎週のように注射器で膝の水を抜く生活。 痛みと不安で、外出するのも億劫になっていませんか?
整体歴27年、延べ数万人の膝を診てきた経験から、はっきりとお伝えします。
水を抜いても、また溜まります。 なぜなら、水は「結果」であって「原因」ではないからです。
火事が起きている家で、煙だけをウチワで仰いでも火は消えません。火元を消さない限り、煙は永遠に出続けるのです。
では、その「火元」とは何か? それは軟骨のすり減りではなく、膝関節の「ねじれ不全(スクリューホームムーブメントの破綻)」です。
この記事では、整形外科では語られない「水が溜まる本当のメカニズム」と、その元凶である「膝窩筋(しっかきん)」について、構造医学の視点から解説します。

1. なぜ水が溜まるのか?「冷却水」としての防御反応
まず、「膝の水」を悪者扱いするのをやめましょう。 あれは単なる水ではなく、関節液(滑液)という、膝にとって必要不可欠な液体です。
水の正体は「潤滑油」であり「冷却水」
正常な膝にも関節液は存在し、以下の役割を果たしています。
- 軟骨に栄養を届ける(軟骨には血管がないため、関節液が栄養源)
- 動きを滑らかにする(潤滑油として摩擦を減らす)
- 衝撃を吸収する(クッション材として関節を守る)
しかし、関節内で「摩擦」や「衝突」というトラブル(炎症)が起きると、体はそれを冷やそう、洗い流そうとして、急激に関節液を増やします。
膝の中で起きていること
- 膝の中で、骨と骨が不自然にぶつかる(摩擦発生)
- 滑膜(かつまく)が炎症を起こし、熱を持つ
- 火事を消すために、体が大量の「水(関節液)」を出動させる
- 結果、膝が腫れてパンパンになる(関節水腫)
つまり、水が溜まっているのは「膝の中でまだ摩擦(火事)が起きている」という証拠なのです。 この状態で水を抜いても、火種である「摩擦」が消えていなければ、体はまたすぐに水を出して冷やそうとします。
これが「水を抜いても繰り返す」理由です。
2. 摩擦の真犯人:スクリューホームムーブメント(SHM)の破綻
では、なぜあなたの膝だけが、歩くたびに摩擦を起こすのでしょうか? それは、膝が「まっすぐ伸びているようで、実は伸びきっていない」からです。
膝は「ねじれて」ロックされる
膝関節には「スクリューホームムーブメント(Screw Home Movement: SHM)」という精巧な仕組みがあります。
膝は、完全に伸びる直前(最後の30度くらい)で、スネの骨(脛骨)が外側にクルッと約10度ねじれる(外旋する)ことで、カチッとロックされます。
正常な膝とあなたの膝の違い
- 正常な膝: 伸びる時にねじれてロックされる → 骨で体重を支えるので筋肉は休める(省エネ)
- あなたの膝: ねじれが起きず、ロックされない → 常にグラグラした状態で、筋肉で無理やり支えている
この「ロックされない不安定な膝」で歩くとどうなるか? 一歩ごとに大腿骨と脛骨がズレて擦れ合い、強烈な「剪断力(せんだんりょく)」が発生します。 これが滑膜を刺激し続け、水を溜める元凶となるのです。
3. ロックを邪魔する「膝窩筋(しっかきん)」の悪さ
この大切な「ねじれ」を邪魔しているのが、膝の裏にある小さな筋肉「膝窩筋(しっかきん)」です。
膝窩筋の本来の役割
この筋肉は本来、膝のロックを外して曲げ始めるための「鍵開け役」です。
しかし、変形性膝関節症の方の多くは、ここがガチガチに固まっています(スパズム)。
膝窩筋が固まるとどうなるか
- 膝窩筋が固まる → スネの骨を内側に引っ張り続ける(内旋拘縮)
- 結果 → 膝を伸ばそうとしてもスネが外側に回れず、ロックがかからない(SHM不全)
- さらに → 蝶番(ちょうつがい)が壊れたドアのように、開閉のたびに摩擦熱を起こす
この「膝裏の硬さ」を解除しない限り、いくらヒアルロン酸を打っても、膝の摩擦は止まりません。
当院がベースにしている「構造医学」は、重力と人体の関わりを物理学的に研究する学問です。単なるマッサージではなく、この「関節のねじれ」を物理的に整えることで、摩擦そのものを消失させるアプローチを行います。
4. やってはいけないこと:痛い状態での筋トレ
整形外科でよく言われるのが「太ももの筋肉(大腿四頭筋)を鍛えなさい」というアドバイスです。 しかし、膝がねじれたまま筋トレをすると、かえって炎症を悪化させるリスクがあります。
なぜ筋トレが逆効果になるのか
- 膝窩筋がロックしたまま → 膝は正常にねじれない
- その状態でスクワット → ねじれたまま負荷をかけることになる
- 結果 → 摩擦がさらに増え、炎症が悪化する
筋肉を鍛えるのは大切ですが、その前に「膝が正しく動く環境」を整える必要があるのです。 車軸が曲がったままの車で、アクセルを全開にするようなものです。まずは車軸(膝のねじれ)を直しましょう。

5. 解決策:膝窩筋リリースで「ねじれ」を取り戻す
水を止めるためには、以下の手順で「膝の機能」を取り戻す必要があります。
STEP 1:正しいアイシング(構造医学的冷却)
炎症があるうちは、冷やすことが最優先です。
- 方法: 氷と水を入れた氷嚢(ひょうのう)を膝のお皿周りや膝裏に当て、バンテージで軽く圧迫して20〜30分
- 重要: 保冷剤ではなく、必ず「氷嚢」を使ってください。保冷剤は温度が低すぎて(マイナス)、表面しか冷えず凍傷のリスクがあります。氷水(0度)が最も深部まで熱を奪ってくれます。
STEP 2:膝窩筋(しっかきん)リリース【安全版】
膝裏のロックを解除します。指で強く押すと神経を痛めることがあるため、ボールを使った安全な方法をご紹介します。
- 床や畳の上に座ります。
- テニスボールを用意し、膝の真裏(折り目の部分)に挟みます。
- そのまま、ゆっくりと膝を曲げていきます(正座をするように、でも痛みがない範囲で)。
- ボールが膝裏を圧迫し、「痛気持ちいい」ところで10秒キープします。
- これを3回繰り返します。
※注意:強くやりすぎると痺れが出ることがあります。最初は優しく行い、違和感があればすぐに中止してください。
STEP 3:専門家による調整
膝窩筋だけでなく、足首や股関節のねじれも同時に整える必要があります。 自己流では限界があるため、構造医学に精通した専門家に診てもらうことをおすすめします。
【臨床の報告】毎週水を抜いていた60代女性が、膝窩筋リリースで水が止まった
当院に来られたのは、60代の女性でした。 毎週整形外科に通い、注射器で膝の水を抜く生活が半年以上続いていたそうです。
「先生からは『水が溜まるのはクセになるから仕方ない』と言われて、もう諦めていました」 そう肩を落とす彼女の膝を触診してみると、やはり膝裏(膝窩筋)がカチカチに固まっていました。
施術の内容:
- 膝窩筋を丁寧にリリースし、膝のねじれを取り戻す
- 足底筋膜調整。また足首のアライメントも整え、過回内(扁平足)を改善
- 股関節周りの筋肉を活性化させ、膝への負担を減らす
その後の経過: 施術後、彼女は「あれ?膝がスッと伸びる感じがします!」と驚いていました。 その日から、水が溜まらなくなったそうです。
「もう注射に行かなくて済むんですね」と涙ぐむ彼女を見て、私も本当に嬉しかったです。 膝だけを見るのではなく、膝窩筋のロックと足首・股関節のねじれを見ることの重要性を、改めて実感した症例でした。
※個人差があります。本記事は改善を保証するものではありません。
膝の「水」は、体からのメッセージ
「水が溜まる」というのは、膝が「ねじれていて苦しい!摩擦で熱い!」と叫んでいるサインです。 その声を無視して水を抜くだけでは、解決になりません。
大切なのは:
- 膝裏の「膝窩筋」を緩める
- 膝が正しくねじれてロックされる機能を取り戻す
- 足首や股関節のねじれも同時に整える
この物理的な環境さえ整えば、炎症は自然と治まり、水は勝手に引いていきます。
「一生付き合っていくしかない」と諦める前に、まずは膝裏の硬さを取り除くことから始めてみてください。 痛みを我慢しなくていいんですよ。一緒に改善を目指しましょう。
※本記事は改善を保証するものではありません。強い痛みや発熱を伴う場合は、まず医師の診察を受けてください。
水を抜くとクセになりますか?
「水を抜くとクセになる」というのは医学的根拠のない俗説です。
ただし、原因(膝のねじれ)が残っているから、また溜まるだけです。水を抜くこと自体は悪くありませんが、それだけでは解決にならないということです。
何回くらいで良くなりますか?
ただし、長年の癖で再び硬くなることもあるため、2〜3回の調整とセルフケアの継続をおすすめしています。
痛くないですか?
無理に強く押すことはありませんので、ご安心ください。
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